製造物責任制度

物を製造すると言う観点からの今日までの企業活動の中心は、一定の水準の安全性をはかりつつ、製造の合理化、省力化、迅速性等、あるいは、ムリ、ムダ、ムラを無くするいわゆる三無主義で、全社的な品質管理(TQC=Total Quality Control)を行ってきました。
これらは全てある意味では、企業の論理であり、全社的な品質管理と言っても、公的な例えば、JIS規格に準拠した社内規格を満足する一定の水準の安全性を確保しつつ、その後は企業の論理で全てを処理してきました。しかしながら、製造物責任法が米国や欧州ではすでに実施され、また日本でも平成7年7月に施行されたので、今後は、企業の論理で全てを処理してきた今までのTQCの概念と同時に、ユーザー側に立った品質保証の体制が、この製造物責任法の観点だけでなく、ISO-9000シリーズの品質保証/品質管理体制や顧客満足という重要な観点に立って構築されていかなければなりません。すなわち、社内の全ての管理体制、各企業の社内規定や社内規格の見直し、さらに製品自体の見直しと設計変更が避けられないでしょう。品質について対外的に、全社的な責任体制の構築も不可避となるでしょう。

 

 

製造物責任に巻き込まれないための諸策(PLP)


近年、企業のリスクマネジメントという企業防衛の概念が定着しつつありますが、その中でも、とくに製造物責任(PL)についての概要を説明します。製造物責任(PL)の事件やこの種の新聞報道がほぼ毎日のようになされていることは各企業で理解されている通りです。 日本の企業が米国において、製造物責任係争に巻き込まれた例として、1992年の昭和電工が輸出した薬品原料に副作用があるとして集団訴訟になり、初回の和解金として数十億円の支払をしたケースがあります。米国では、不法行為による過失の責任(例えば、製品や商品の欠陥により第三者が損害を被った場合の責任)に対して、直接契約に関係ない者(すなわち、被害者に製品や商品を直接販売していない製造メーカー)に責任を持たせることが認められています。 さらに、被害者は、責任の追求に対して、メーカーに過失があるというような立証を行わずに済むということが認められるようになっております。
またEC諸国でも欠陥製品/商品に対して、製造業者の無過失責任制度に移行する制度を採択しました。この制度は、厳格責任制度ともいわれます。日本で平成7年7月に製造物責任法が制定される前は、製造物について製造業者が責任を追求される場合には、製品に欠陥があることを使用者もしくは消費者自身が立証し、民事訴訟法に従って、損傷、損害を請求することになっていました。

 

今回制定された日本の製造物責任法においては、製品の欠陥の有無を二次的に捕らえ、製品の通 常の使用、消費を通して、損傷、損害、場合によっては死亡事故に遭遇する場合、製品の製造業者はこのような事故による損害を賠償しなければならないという制度を採用しております。 製造業者がこの賠償から逃れるには、逆に製造業者自身が自社製品に欠陥が無いことを、あるいは使用者また消費者が全く非常識な使用方法や消費方法をしたことを立証しなければなりません。合理的に予見できる範囲内の誤使用や拡大的な使用や消費では、製造業者の責任を回避できないでしょう。

 

即ち、製造業者は過失の有無如何にかかわらず、その損害の賠償を履行しなければならないケースに直面しているのです。

 

日本の企業においてもこのリスクマネジメントに対する考え方が最近定着しつつあります。外国での駐在員や、出張者がテロ事件に会うとか、何かの事故に遭遇するとかのような比較的一過性のリスクに対する防備もさることながら、企業を取り巻く環境には、前述のような一過性のリスクだけではなく、潜在的ではありますが、休火山のような危険が潜んでいます。ひとたび顕在化すると、企業の存亡にかかわるほどの甚大な影響を与えるものなのです。

 

この民法の条文では、企業の過失や不法行為を立証しなければならず、今日のような科学技術が発展した状況下で製作される製造物は、欠陥があったとしても一般消費者が企業の過失を立証することには非常な困難を伴います。従って、日本国内においても、欧米並みの製造物責任制度を導入することが各界で検討され、今回の導入に至った訳です。現に輸出型企業では、輸出先の欧米諸国ですでにこの洗礼を受けています。今こそ、製造物責任制度を研究し、対策をとらなければなりません。

 

このような状況下で、製造業者の責任の比率を最小限にするために、商品/製品の安全に対する認識を社内で徹底し、製品設計、機械加工、組立て、購入部材/部品の吟味、チェック、製造工程や最終検査体制の見直し、品質管理/保証に万全を期することが重要です。

 

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